2015-03-05

第1回コレシャ朝活 実践者と研究者の距離と関係~まとめ

朝活第1回 まとめ


2015年3月1日,これからの社会科研究会の初めての「朝活」が行われました。

今回から,「募集」を募り,google+のハングアウト機能を用いて,遠隔的な対面式ディスカッションを行っています。

朝7時,若干のもたつきがありましたが無事画面越しに全員集合し,始まりました。

参加者は,井上昌善さん,後藤賢次郎さん,柴田康弘さん,そして南浦です。

今回のテーマは,「社会科の実践者は,研究者とどのような距離感で関わり,何を得ることを求めているのか」でした。


テーマの背景

「実践者=研究者」という前提


このテーマは,これまでの「コレシャ」の話題の中に散見された「実践をどう語るか」という話から来ています。
とくに,「研究は『ポイント』をまとめ、聞くことなのか?」の回では,いろいろな人からご意見をいただきました。
いわく,


  • 私は大学の研究者だが,単につらつらと語るだけのことを現場は求めていない。
  • 現場の教員,とくに教科の授業に熱を入れている人であればあるほどは,大学の研究者に「斬ってもらう」ことを求めている。

などなど。

その中で,私たちも,それから意見を出していただいた方も整理できていなかったことに気付きました,それが以下の問題です。

私たちがその回で言及していたのは,「実践者が実践を研究としていかに語るか」の話をしていたのですが,読み手の人の中には,「指導助言などのアドバイザーとして,実践者にどう語るか」として受け止めている人もいました。

実際,私たち自身が研修の話を混ぜて話すなど,「語る主体は誰か」を意識できていなかったことでもありました。

これまで,社会科教育では以下のような文脈が確かにありました。それは,「実践者=研究者」という視点でしょうか。

社会科教育の研究に関わっている人は誰であれ,「実践もできるし研究もできる」という「実践者=研究者」であることを目指します。その背景には,もともと,あるいは今も教員である/あった人が多いということ,社会科教育の研究が基本的に「授業」に視点が当たり,それをよりよくしていくことの研究であったことがあるのかもしれません。そのため,他の分野の学問のように,研究者が「researcher」に特化せず,授業者としてのプロであることが同時に求められていたことがあるため,研究者は同時に実践者である,という感覚が他の学問に比べて多くあったように思います。それは,ある意味で研究が常に実践と密接に関わっていく土壌を作ったといえます。



「実践者=研究者」の視点が引き起こす問題

しかし,「実践者=研究者」という視点は同時に,ある種の弊害ももたらします。
それは,実際には指導助言の場で,学校現場の教員の授業に,大学の教科教育研究者が指導助言者として関わることを典型例としてあげられるように,「実践の当事者としての教員」と「実践の非当事者としてのアドバイザー」とが「実践者=研究者」という同一人物の中に併在しているのでなく,「実践者≠研究者」として現れる場面は間違いなく存在します。

その時,「実践の当事者としての教員」と「実践の非当事者としてのアドバイザー」は,どのような関わりを求めあい,そして何をやりとりすることを考えているのでしょうか。
意外に,これについてはあまり議論をされたことがありません。

議論がないまま,「実践の当事者としての教員」と「実践の非当事者としてのアドバイザー」が互いに自分たちを「実践者でもあり研究者でもある」とのみ捉えていれば,そこにはある種の軋轢や関係の歪みも生まれかねません。

とくに,「実践の非当事者としてのアドバイザー」の側がそれを理解していなければ,時にそれは,「アドバイザーの方が研究的視点も実践的力量も優れている」かのような関係をつくりだし,両者の間に権力関係を打ち出してしまうこともあります。

そこで,今回の朝活では,朝7時という時間には驚きの話題ですが,



  • 学校現場の教員と大学の教員はどのような距離感で関係を持とうとしているのか。
  • 学校現場の教員は,大学の教員から何を得ようとしているのか,大学の教員は何を与えようとしているのか。


を話し合いました。


議論の内容

今回は,中学校の社会科の教員が2名,大学の社会科教育の教員養成に携わる教員が2名,でのディスカッションでした。



  • 学校現場で同僚同士で授業について話していると,どうしても子どもたちの様子に根ざした話,子どもの反応がどうだったか,という話に特化されることが多くなり,それ以外の視点が持ちにくい。例えば,今自分が教えている歴史や地理の内容が,正当なものなのかどうかが分からなくなってしまう。そこを見失ってしまうので,アドバイスをもらえるのはありがたい。


という意見。特に,社会科教育など,教える「内容」の正当性を考えるという視点での関わりを求めるというものです。
それから,もう少しざっくりとした意見に,



  • どこかで自分たちのやっている授業を,大学の先生に見てもらうことで「権威づけてほしい」という気持ちはあるような気がする。「良いって言ってもらいたい」「お墨付きをもらいたい」というような感覚もあるような気がする。


という意見もありました。なるほどなるほど……と4人でうなずきながら。ただ,「権威づけてほしい」ということの後に「良いっていってもらいたい」とあるように,やはり「正当性を担保してほしい」ということはあるのかもしれません。ここには一つ「アドバイザーとしての役割」があるような気がします。

もう一つ,「関わるという点で言うと,授業開発からいろいろ関わってもらえたら」という言葉もありました。

こうしたことに対して,今度は若手大学教員の立場から


  • 「教える歴史や地理の内容が正当なものかどうか」という視点というのは,実は社会科教育の研究である自分は,とても難しいところでもある。内容の深さについては,それは歴史や地理の研究者のほうが専門的で,僕の場合…おそらく社会科の研究者は特に,素人の域を出ていないものでもある。だから,内容の深さを求められていくと,実はどうなんだろう,という部分はある。


という言葉も出ました。例えば近代史の授業を作っている上で,その教材から見えるものを例えば「知識の構造」のように作っていったとき,その「知識」の深さ広さは,歴史の専門家でなはい場合,何とも言えない経験的なもの,趣味的なものになります。


さらなる問いへ

こうした中で,4人で話し合っている中で出てきたのが,「社会の動向→子どもたちに必要な力→具体的な実践」という研究の流れを作ることを現場の教員は欲しているけれど,それは一概に作れるものではないのではないか――ということです。大学の教員側としては,具体的に,目の前の実践当事者の持つ現場の子どもたちの様子が分からないために,何を内容として正当なものとするのかは判断に難しくなる場合もあります。必ずしも,その流れをつくることが,学校の先生にとって重要なことかもわからず,葛藤します。

もう一つ出てきたのが,実践当事者の人が研究をするときにある「理論を見てほしい」というニーズです。ここでいう「理論」とは,上の「社会の動向→子どもたちに必要な力→具体的な実践」という研究の流れにあたることでしょうか。しかし,往々にして大学教員の側から見ると,実践当事者の方の研究の報告書や論文で,実践の前にある「理論編」のような部分があまりにも大きすぎ,取ってつけたような感があり,もっと素直に実際の授業の話をしてくれたらいいのにな,と思うことは多々あります。

このあたりには,「学校教育における研究」というものがあまりにも「理論の応用としての実践」というスタイルで語られることの弊害にも感じます。

そういう話をしながら次第に4人の中で出てきたのは,「私の授業を斬ってください」とは何だろうか,ということです。
実践当事者と実践非当事者のアドバイザーが関わるとき,教科教育の関わりでは往々に,この「斬ってください」という言葉が飛び交います(あるいは「叩いてください」)。しかし,「斬る」とは何でしょうか。

「斬る」という言葉。しかし,「斬られる側」は何を斬ってもらおうと考えているのか,「斬る側」は何を斬るのか。往々にしてその内容は異なってる,ずれているようにも思います。そのとき,実践当事者は,二度とその大学の教員に関わりたいとは思わなくなります。

ときに,たまたま「斬ってほしいもの」と「斬るもの」が幸福にも一致することがあります。しかし,その関係で結ばれていても,公共空間で浮き上がってしまう恋人のように周りから見たら妙なものに見えてしまう――2人は楽しんでいても,周囲の社会から見たら恐ろしく外れている2人の関係であることもあります。
いや,そもそも「斬る」という言葉そのものに,ある種の権威作用が働いているとも言えます。

このあたりでちょうど朝活の時間が終わってしまいました。

そこで,次回の朝活では,「『斬る』ということばに込められたものは何か」を考えていきます。

参加したい方,ぜひ,ご連絡ください。

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そういうわけで,告知です。




●Co-Re-sha:これからの社会科研究会 第2回朝活(都合により夜活)
「授業を斬ってください」ということばに込められたもの,受け止めるもの

日にち 2015年4月4日(土)
時間 21:30~23:00

google+のハングアウト機能を使ってディスカッションをします。

ディスカッション参加希望者は,googleのアカウントを取得したうえで,coreshakaiあっとまーくgmail.com(あっとまーくを@に変えてください)までご連絡ください。定員の関係で締め切らせていただくことがあります。

google+のハングアウトオンエアを使って,議論の様子はYOUTUBEで視聴可能にする予定です。(URLは後程ご連絡します)